電話相談は

第30回派遣トラブルホットライン報告

一律3年雇止めに泣寝入

「雇用安定措置」に実効性を

 2015年9月労働者派遣法は大幅に改正されました。新たに導入された「個人単位の3年上限規制」によって、派遣労働者は同じ職場(課)に3年しかいられなくなりました。施行3年目が間近に迫った現在、多発する雇止め通告に派遣スタッフの悲鳴が上がっています。
 NPO派遣労働ネットワークと全国ユニオンが9月1日、2日に東京で実施した電話相談、及び静岡ふれあいユニオンが同時間帯で実施した相談会には、2日間で145人、243項目の相談が寄せられました。
 その中では、雇止め相談が42%と突出し、事態は深刻です。改正法では3年雇用見込の労働者に対する「雇用安定措置」を義務付けましたが、派遣先への雇用申込、派遣元での直接雇用など、ほとんど実施されていません。雇用安定措置が講じられた場合でも賃金が下がったり、無期雇用は名ばかりというのがほとんどです。
働き方改革一括法で派遣法は再改正されましたが、新設された「派遣先労働者との均等待遇」の実効性は大いに疑問ありです。派遣労働者の権利主張が可能となるような、派遣法の抜本改正こそ急務です。

◆ 第30回 ホットライン 実施要綱 ◆
日時:2018年9月1日(土)・2日(日)午前10時~午後8時
窓口:NPO法人・派遣労働ネットワーク(☎03-5354-6250)
対応:弁護士、NPO、ユニオンの相談スタッフ等が対応

- 相 談 内 容 の 集 計 結 果 (項目別)-
2日間で受け付けた相談項目の内訳(%は相談者数に対する比率)

相談内容 今回(2018年9月) 前回(2016年8月) 前回(2015年8月)
雇止め(契約打切・更新なし) 61(42%) 22(22%) 13(11%)
労働時間・賃金(通勤費含む) 29(20%) 32(32%) 31(25%)
契約が曖昧、実際と違う 21(14%) 11(11%) 22(18%)
差別・ハラスメント 20(14%) 22(22%) 15(12%)
賃金不払い(休業手当・残業割増、等) 17(12%) 12(12%) 6(5%)
労災・安全衛生・健康 16(11%) 2(2%) 7(6%)
解雇(契約の中途解除等) 15(10%) 14(14%) 13(11%)
雇用保険・社会保険 9(6%) 8(8%) 6(5%)
労働条件の変更 8(5%) 3(3%) 5(4%)
仕事の紹介がない  8(5%) 1(1%) 4(3%)
退職トラブル 7(5%) 3(3%) 11(9%)
事前面接・個人情報 4(3%) 2(2%) 5(4%)
違法派遣(偽装請負・二重派遣等) 3(2%) 3(3%) 3(3%)
紹介予定派遣 1(1%) 4(4%) 1(1%)
その他(無期雇用化・雇用安定措置等) 24(16%) 32(32%) 22(18%)
派遣関連相談の総項目数 243<145人> 171<99人> 184<122人>

相談の特徴・ポイント

 2015年の改正派遣法は労働者派遣のシステムを大きく変えました。業務単位の派遣期間規制がはずされ(それまで政令指定「26業務」には期間制限がありませんでした)、「個人単位」と「事業所単位」の2つの一律3年上限規制に変わりました。
 改正法施行から3年目を迎える現在、どんな問題が新たに生じているのでしょうか?

3年規制による雇止めへの悲鳴が殺到
今回のホットラインでは、契約満了による雇止めに関する相談者が全体の42%を占めました。その多くが法改正による「個人単位3年上限規制」によるものでした。
改正法では3年雇用見込のある派遣労働者には、①派遣先への直接雇用の依頼、②新たな就業先の提供(合理的なものに限る)、③派遣元事業主による無期雇用、④その他の雇用安定措置(教育訓練・紹介予定派遣等)による雇用安定措置が義務付けられました。
しかし、実際には突然の雇止めで、泣き寝入りを強いられているのが現実です。(事例1~7)

義務化された「雇用安定措置」は機能不全
厚生労働省の派遣事業報告集計結果でも、派遣先への直接雇用依頼は僅か11.2%、そのうち実現したのは42.2%で、半分は断わられています(P4のグラフ参照)。
派遣元で無期雇用化された場合には、「通勤費が払われる一方で時給が引き下げられた」との相談が相次ぎました(事例12~16)。またホットラインの直前には、派遣会社が1か月仕事を確保できない時は労働者は「退職」とする「無期雇用派遣社員就業規則」が広がっていることが明らかになりました。
多くは「新たな派遣先の提供」でお茶を濁しているようですが、その場合でも、時給や通勤条件が悪くなり新たな派遣先は簡単に見つかりません。
雇用安定措置は、もっと実効あるものに改めることが急務です。

見えない!「事業所単位規制」と期間延長の動向
2015年改正法のもう一つの大きな柱は「派遣先事業所単位の3年上限規制」です。派遣先は原則3年以上派遣を利用することはできません。3年を延長するためには「従業員過半数代表等」からの意見聴取手続きが必要です。
しかし、派遣利用をやめたという話はあまりありません。当初予想通り派遣先のほとんどが派遣の無期限活用に踏み切ったのでしょうが、ホットライン相談からは、延長手続きの動向は全く見えてきません。新たなシステムに派遣労働者の声は全く取り入れられていないのです。

いい加減な契約・蔓延するハラスメント
業務内容が違う、残業が多い、長期契約のはずが・・・など、文書で交わした契約と実際が違う、という相談は相変らず。3分の1世紀になっても派遣ビジネスの基本が据わってない感がします。   派遣先におけるいじめ、パワハラで心身を病む人も増えています。
苦情を訴えても、いい方に解決することはごくまれです。派遣先から労働者差し替えの要望が出され、結局契約終了に至ります。派遣労働者の雇用の不安定さが、権利の主張を大変困難にしているのです(事例21~31)。

派遣労働者の権利主張が可能となる法改正を
働き方改革一括法で派遣法は再改正されました。2022年4月施行で現在ガイドラインの作成が進められています。しかし、新設された「派遣先労働者との均等待遇」への道は遠そうです。派遣労働者の権利主張が可能となるような、派遣法の抜本改正こそ急務です。
派遣ネットは、派遣トラブルの解決へ向けた取り組みを支援しながら、引き続き法改正を求めていきます。

派遣・偽装請負関連の相談事例

3年上限ルール直前に突然の雇止め通告

【相談事例1】40代・女性
2015年3月から同じ派遣先で3か月更新を繰り返して3年を超えた。8月にはいったところで、突然9月末で契約は終了すると言われた。現在の派遣先で働いている5人のうち2人に絞りこむという。雇用安定措置みたいなことは、全く示されていない。

【相談事例2】50代・女性
大手企業に翻訳業務で派遣されている。今年12月で派遣期間が3年になるが、派遣会社からも派遣先からも今後について何の説明もない。ハローワークに行ってすぐ次の仕事が見つかるか心配だ。

【相談事例3】女性・愛知
大手の派遣会社から派遣されて4年になる。現派遣先での期間制限抵触日は2019年1月1日となっているが、9月末で次の契約は更新しないと言われた。3年になるのにあと3か月あるのに・・・10月からの求人は沢山あるからなど、派遣会社は早めに派遣先を代えたがっているようだ。

【相談事例4】50代・女性・受付業務

10年以上、同じ派遣元・派遣先で受付として働いている。契約期間6か月更新から3か月更新になり、先日とうとう契約の打ち切りを通告された。理由は長く働いているからというだけ。

【相談事例5】50代・女性・神奈川
11年間コールセンターに派遣されて働いてきた。派遣4名のうち2名が打ち切りとなり、残り2名はパートに切り替えられた。連絡が遅いと抗議したが、「報告が遅れて」というだけで、次の仕事の紹介もない、インターネットで仕事を探しているが、時給を下げても適当な仕事は見つからない。

【相談事例6】40代・女性・事務・埼玉
10年間同じ派遣先で事務職として働いてきた。1か月更新で9月20日までの契約はあるが、8月末に9月20日で辞めてくれと言われた。営業所が年内に移転するからだという理由だが、来れますか?というだけで、もう辞めるものと決めつけている感じ。年休は消化していいというが、残業代だって未払い分がある。

【相談事例7】男性・事務・静岡
10月1日に派遣社員だけの異動が突然伝えられた。総務事務から営業や人事部へ。法改正の影響(同一課で3年以上働けない)のようだが、急に言われて・・・不満だし、不安だ。

派遣法に定められた雇用安定措置は無力

【相談事例8】女性・神奈川
同じ派遣会社で15年以上、現在の派遣先になってからも5年以上働いている。無期雇用になれないかと派遣会社に相談したが、営業事務なら可能だが、そうでないとだめだと断られた。派遣先にも派遣元から申入れをしてもらったが、やはり断られたと聞いている。

【相談事例9】女性・販売
同じ派遣元・派遣先で4年以上勤務してきた。店舗に派遣されているが、12月末で契約が切れると言われた。派遣先からは直接雇用の話も出ているというが、どうしたらいいか?(女・販売)

【相談事例10】30代・女性・事務・京都
12月1日が3年期間制限の抵触日になっている。同じ派遣先で働きたいが。派遣先はパートでないと無理と言っている、派遣元からは無期雇用派遣になるには、派遣料金を上げないと無理と言われた。結局契約が切られそうだ。

【相談事例11】40代・男性・東京
11月に3年満了となる。今のところ派遣先の契約社員になる予定。しかし、1年ごとの契約なので雇止めが不安。

参考:派遣労働者に対する派遣元の雇用安定措置の実施状況
厚生労働省「平成28年度労働者派遣事業報の告集計結果」による

(*派遣先に雇用を依頼した11.2%のうち、実現されたのはその42.2%となっている)

派遣元で無期雇用になると、賃金は大幅ダウン

【相談事例12】40代・女性・愛知
同じ派遣会社で10年勤務してきて4月から無期雇用になった(労働契約法18条による無期転換か)が、現在の派遣先は来年の1月末で契約が終了する予定になっている。次の派遣先だと時給がダウンするというので今後どうしようか迷っている。

【相談事例13】女性・事務
大手派遣会社の事務派遣として3か月契約を更新してきた。派遣されて5年目が目前になった2018年7月に無期雇用派遣に切り替わったが、時給は1700円から1600円に引き下げられた。理由は通勤交通費を支給するからとのこと。

【相談事例14】女性・広島
派遣元も派遣先も変わらないまま10年以上勤務していて、10月から派遣元の無期雇用となることになっている。ところが賃金については、これまで出ていなかった交通費を支給する代わりに、時給を66円下げるという。結局、通勤費が出ても手取金額はあまり変わらない。むしろ残業時間単価は下がることになり、納得できない。

【相談事例15】40代・男性
派遣元に無期雇用され、間に2社が入って派遣されている。3次下請派遣の派遣先が9月末で契約を切ってくるようだ。契約が切られると自社待機で賃金は6割となる。これでは部屋代も払えない。

【相談事例16】60代・男性・愛知
技術者派遣会社を通して大手自動車部品メーカーで働いてきた。6月末日で定年退職し、7月から限定正社員になったが派遣先は前と変わっていない。しかし賃金は時給制になり、年収ベースで150万円ダウンした。現在の時給だと派遣料金の55%程度だが、67%とするよう交渉してみたい。

派遣先と派遣元の間の軋轢も・・・

【相談事例17】男性・派遣先
1年半以上受け入れている派遣スタッフを直接雇用しようとしたら、派遣元からまだ3年たってないので今直接雇用するなら200万円払うよう言われた。そんなものなのか。

【相談事例18】40代・女性・保育士
保育園に派遣されている。派遣元に抵触日がくると契約更新はできなくなり、別の保育園なら紹介できると言われた。今行っている派遣先からは「できれば直接雇用したいが給料が下がることを了解してほしい。また、派遣元には違約金を請求されるので黙っていてほしい」と言われた。。

【相談事例19】女性・不動産業務
派遣会社からは無期雇用は無理と言われた。派遣先にも直接雇用は厳しいと言われた。派遣先からは、他の派遣会社に頼むからそちらから来てくれと言われた。

【相談事例20】女性・静岡
派遣先から「うちで直接採用したい」が派遣会社には紹介料をとられるので黙っていてほしいと言われた。新しい就業先を断ったら他の人が入った。私は3年で切られるのか?

いい加減な契約・身につかないキャリア→苦情を言えば切られる

【相談事例21】30代・女性・事務
外資系のメーカーに派遣されているが、職場見学した時とも契約書とも実際の仕事の内容が違う。辞めた人の仕事も回ってきてさらに責任の重い仕事になり、残業も増えてきた。半年でとうとう体調を崩した。何度も派遣元に相談したが派遣先に言われるとおりやってくれと言うだけで全く対応してくれない。

【相談事例22】30代・女性・事務
長期の仕事ということで派遣された。3か月契約を更新していくはずが、次の更新で2か月契約と言われた。派遣会社の人と「おかしいね」と言っていたら、育休をとっていた社員が戻ってくるのでとのこと。その後同じ会社の違う部署に移ったが、派遣ではなく請負契約とかに切り替えられ、1週間で仕事がなくなり、派遣元に訴えたら契約を切られた。

【相談事例23】40代・女性・事務
同じ派遣会社で20年働いているが、3か月で派遣先をコロコロ変えられる。全くキャリアが身につかない。

【相談事例24】女性・キャドオペレーター・契約社員)
派遣スタッフ募集の広告を見て入社した。面接のときに建設キャドの仕事を覚えたいという話をしたら、派遣会社の契約社員(3か月更新)として採用された。しかし、入社後もインターネットで自分で調べるだけで仕事はさっぱり教えてくれない。

【相談事例25】女性・神奈川
指揮命令者から契約外業務を依頼され断ったところ、派遣先の風あたりが強くなり、もっとスキルアップしろ、仕事をしたくないならやめてもらっていいと言われた。それなら契約内容の変更と時給をアップしてほしいと要求したら、結局雇止めになった。

【相談事例26】男性・神奈川
大手派遣会社から派遣されている。契約書にはデータ入力および受電となっていたが、実際はほとんどが単なる軽作業。派遣先の上司も軽作業と聞いていると言っている。社会保険や厚生年金にも未加入とされていたのに、先月と突然保険料が引かれていた。

蔓延するハラスメント

【相談事例27】女性・静岡
派遣先の正社員は仕事をろくに教えもしないで、派遣社員が失敗するとすごく怒る。派遣社員の多くは働くのが嫌になるほどのパワハラを感じている。正社員と派遣社員の立場をこえて仕事をもっと丁寧に教えてほしい。

【相談事例28】50代・女性・事務・栃木
ハローワークの求人を見て応募した。1年以上働けると言われていたが、派遣先上司(親会社の人の奥さんで権力絶大)のパワハラがひどく、会社のホットラインに相談したら8月末で終了と言われた。

【相談事例29】女性・秘書・東京
ある役員とその下の部長が言いがかりをつけてくる。ストレスから顔面麻痺。昨日から休んでいる。派遣先のコンプライアンス委員会に苦情申立をしたら、なんとかしましょうと言ってくれたが、結局9月末で雇止めを通告された。

【相談事例30】女性・事務
3か月契約を更新する約束で半年ほど働いている。社長、部長のパワハラがひどく、担当だった上司がやめさせられたのに続いて、社員や派遣スタッフが相次いで辞めてしまい、自分だけが残った。仕事も満足に教えてくれない。派遣元に相談しても全く頼りにならない。

【相談事例31】女性・事務)
「かわいくないと更新できない」などと言われていた。ストレスが多く、メンタル疾患で心療内科に通っていた。結局、退職した。

紹介予定派遣・日雇派遣

【相談事例32】女性・営業・神奈川
紹介予定派遣で7月6日に登録、7月20日に派遣先で面接があり、7月27日には口頭で内定が伝えられた。ところがその後連絡がなくなり、内定が取り消された。

【相談事例33】男性・日雇派遣・埼玉
他にバイトをしていて、週1,2回日雇派遣を利用している。日払い仕事を中心にしているのだが最近ろくな仕事先がなく、登録してもいつも不採用と嫌な目にあっている。ところが不採用になった人間に対して片っ端から紹介の電話をしてくるところがある。こういうところで痛い目にあったことがあり、困っている。

【相談事例34】女性・日雇派遣
自宅の近くで仕事があるかのように宣伝したので、登録してみたが、実際には遠方の仕事ばかり。ニトリの品出しや港湾倉庫ばかりだ。どうしたらいい?

派遣ネットでは、日常的にも相談を受け付けています。
<問い合わせ先>
NPO派遣労働ネットワーク
理 事 長 中野 麻美(弁護士)
連 絡 先 渋谷区代々木4-29-4西新宿ミノシマビル2F
電話03-5354-6250 / FAX.03-5354-6252

第30回派遣トラブルホットライン報告(PDF 323KB)